銀行業界は構造不況業種の仲間入り

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銀行への就職人気が低迷しているという。そうかもしれない。昔の銀行員は預金集めが大変だったが、少なくとも受信サイドの仕事で顧客に迷惑をかけることはなかった。ところが最近は預金集めではなく投信を販売させられるので、損をした顧客からの苦情も多いという。何でこんなことになったのかというと、預金の価値が薄れたからだ。人件費をかけて預金を集めなくても、向こうから預金がやってくる。そして、そんな預金の運用先も乏しい。

以前は事業会社にとって、銀行融資を得られるかどうかは死活問題だった。だが、いまは企業の内部留保が440兆円もある時代で資金需要は乏しい。だから銀行は顧客の預金を自ら運用するのではなく、投信や生保という別の運用先を紹介するビジネスモデルに移行したのである。

その結果、コストがかかる預金残高の膨張を抑え、手数料も入る一石二鳥となるはずだった。だが、その戦略が上手くいっていないことは、就職人気の凋落や銀行株の低迷が物語っている。そして、こうした状況は日本だけではなく欧州も同じなのである。ドイツ銀行やクレディスイスなど著名銀行の株価はいま、軒並みリーマン危機時の安値の半値近辺で推移している。

筆者に言わせると、今や銀行業界はかつての炭鉱と同じ構造不況業種となってしまった。1982年からずっと上昇してきた米国の債務比率(金融資産(債務)➗名目GDP)が2008年にピークアウトしたことがその証左だ(上図)。

米国の債務比率は1920年代後半に急増しているが、そこで起きたのが29年の株価暴落だった。それによって企業や銀行の倒産が続出し、金融債務(債権)は減少に転じた。だが、それ以上にGDPが縮小したので、債務比率のピークは1933年にずれ込んでいる。

この債務比率が肥大化している間は経済は正常化しない。借金の元利払い原資は事業で稼いだお金(実体経済)である。債務比率が高ければ、経済全体の元利払いの負担が重くなるものの、実体経済が好調な間は問題が表面化しない。だが、実体経済の伸び率が鈍化すると、資金的余裕がなくなり、設備投資や消費に回すお金は減る。その結果、名目GDPがさらに減少する悪循環に陥ってしまうのだ。

だから大恐慌期には各国ともGDPを増やすべく努力したが、軍備拡張政策以外は上手くいかず、最終的には第二次大戦で解決したのだった。そうした苦い経験があるので、戦後は各国とも金融の拡大を厳しく規制してきた。

その禁を破ったのがレーガノミクスである。82年の預金金利の自由化から始まって、90年代には銀行と証券の業務の壁も取っ払われた結果、債務比率は急速に上昇した。同時に金利も趨勢的に低下し、債務の拡大を後押しした。そして、その恩恵を最も享受したのが銀行など金融業界だったのである。

債務比率とは実体経済に対する金融経済の規模を示すものなので、その推移をみると、経済規模で潤う銀行など金融業界の繁栄度合いがわかる。その債務比率が2008年をピークに低下し始めているのだ。このことは、金融の規模拡大が限界に達したことを示す。だから銀行はリストラを余儀なくされているのである。

さらに2016年からは金利も上昇に転じ始めた。これは実体経済が伸び悩む中、元利払いが滞りなく出来るのか疑問が生じ始めており、米国政府でさえも債権者からリスクプレミアムを要求されているということだ。

そうなると全てが逆回転し始める。例えば、先日のFT紙はNYマンハッタンのマンション販売在庫が増加し、価格が低下していることを報じていた。先日、お話を伺った日本の不動産業界の重鎮も同じことを仰っており、内外とももはや金詰まりに転じているのだ。

昨年暮れの株価急落で米長期金利は大きく低下し、危機は去ったようにみえる。だが、上図で示した過去100年に亘る債務比率の歴史を振り返るならば、そうした認識は誤りであることがお判り頂けよう。債務比率の低下トレンドはまだ始まったばかりなのである。





by shigg816 | 2019-01-12 13:39 | 金融経済 | Comments(0)

各種統計から独自の切り口でグラフを作成し、経済の先行きを考えるヒントを探ります。


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